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垂氷がんばる。その3。

2010年03月02日

ガンプラの『MG』が1/100サイズを差す用語ではないということを先日初めて知った烏丸です。なんてことだ…。

なぜ今ごろそんなマメ知識を得たのかと申しますと、日曜日に1/100『ガンダムデュナメス』を購入しまして。
この1/100デュナメス、HGもMGもついてないんですよね。
HGが1/144でMGが1/100なのかと思ってましたよ! ガンプラのクオリティを差す用語なのかしら…?

新たに生まれてしまった疑問はさて置きましてw
設定補完用SS『垂氷がんばる。』も、その3を迎えました。
起承転結でいえば“転”に当たるわけで、いよいよ戦況も転回の予感…?


は、と我に帰る。
余りにも破天荒なアイゼンを前に、行動予測を最優先してしまった。
なぜアイゼンが戦場端を、あるいは外野席を目指して突っ走っていったのかは未だに分からない。
それでも、目指す先には彼女にとって有利に働く“何か”があるはずだ。
目論見を通せば勝機が遠のく。今はとにかく彼女を止めなくては。
形振り構わず一足飛びで、垂氷はアイゼンを追い始めた。


元よりアイゼンは俊敏なタイプではない。
それどころか、目立つ点といえば素体・CSCレベルでの頑健さと、徹底的に磨き抜かれた防御センスという、要するに守り一辺倒の神姫だ。
過度な武装を運用できる積載能力もあるにはあるが、それもパワーではなくバランスで保っているに過ぎない。
では何故、このオーナーの元に集う神姫達の中で随一の――正確にはナンバー2なのだが――実力を誇っているのか。
経験の差。それもある。なにせアイゼンは最初に起動され、オーナーとは現時点で3年もの付き合いだ。
だが、それだけではない。垂氷をアイゼンや初雪が導いたように、アイゼンにもまた導き手となった神姫がいたのだ。
アイゼンよりもずっと後に起動した“彼女”は、信じ難い戦闘センスを開花させ、瞬く間に頂点へと上り詰めた。過ぎた力は妬み嫉みの軋轢を生む。当時、それこそ戦闘を長引かせることしか能がなかったアイゼンは特に荒れ、難癖をつけては食ってかかっていった。それを真正面から受け止め、笑い飛ばし、張り飛ばし、可愛がったのが、今では誰もが姉と慕う、セスという名の神姫である。
セスはアイゼンを日々返り討ちにしながら、ひたすらにひとつの教えを叩き込んだ。

「お前はお前以外の何者でもないんだから、お前にしか出来ない事をやんなきゃ。いつも云ってるだろー?
己を解き放て[ロックンロール]”ってさ」

恥も外聞もかなぐり捨て、ひたすらにチャンスを待ち、足掻き、もがき、生存する。環境を、状況を、使える物は何だって使う。無謀さは持ち前の丈夫さでカバーすればいい。…本能剥き出しの、獣の在り方。
目覚めた鉄の獣が猛威をふるいだすのは、それから間もなくのこと。
繰り返すが、アイゼンは俊敏なタイプではない。当然、全力を走ることに費やす垂氷を振り切ることなどできない。
追いつかれ、膝裏を突かれ、無様に転ぶ。それでもいい。
目標は目前。滑稽だろうが、惨めだろうが、“ソレ”さえ手にできれば何も問題はない――!


辛くもアイゼンに追いついた垂氷は、すぐさま走り続ける足を打ち据える。
互いに体勢は整っていないが、バランスを崩すには充分な衝撃だ。激しく転倒したアイゼンはそのまま地面を転がり跳ね、数回のバウンドを経てやっと止まった。
そこにさらに追撃を加えるべく、垂氷は身体をしならせる。しかし、うずくまるアイゼンがしっかりと手にした“何か”の正体を見定めた瞬間、ピタリと硬直してしまった。
「仮にボクがフル武装でも、やっぱ重りにしかならなかったな。どんな武器を持ち出したって、垂氷の手数を止められなきゃー意味がないんだ」
左手を地面に突き、身体を起こしていくアイゼン。隙を晒してまで確保した“得物”を右手に携え、ゆっくり向き直る。
「その点、“コレ”ならカンペキ。武器を打っていなすようなスタイルの相手には持ってこいの、対垂氷用最終兵器」
両手で“得物”を握り、正眼に構える…が、パッと見はまるで釣り人のようだった。釣り竿から水面へと、糸が垂れている。糸と呼称するには余りにも太すぎる糸が。
その様子を見て、あらかじめ退避していたオーナーと初雪が眉間を抑える。
垂氷は涙目で小刻みにぷるぷると首を横に振っている。
無理もない。
“釣り竿”は脚。“釣り糸”はだらりと伸びきった身体。
アイゼンが悠然と構えているのは、未だ絶賛気絶中のロシュその人であった。
口元に笑みが浮かぶ。微笑みとは程遠い、獰猛さを含んだ笑み。それは云うなれば――
「ロックンロール!」
まるで、悪魔のような。


空を翔けてる。
頬を叩く風。全身にかかるG。
いつかTVで見た、ジェットコースターというものに乗ったら、きっとこんな感じなのだろう。
周囲に阿鼻叫喚を撒き散らしながらも、どこか愉悦を垣間見ずにはいられない、あの表情。
入り乱れる感情が最後には“楽しい”に収束していく不可思議さを、いずれは実体験してみたい。
この後頭部から発せられる激しい擦過音と痛みさえなければ。
…あれ? なにかおかしい。
ジェットコースターにそんな要素はなかった気がする。
だってそんなに危なかったらアトラクション失格だよね?
一体どういうことなんだろう。


「一体どういうことなんですか説明してください」
「ロシュをジャイアントスイングしてた。以上」
両足を抱えられ、地面に向かって万歳をする格好のロシュに、アイゼンは簡潔に答えた。
「なんで起き抜けにジャイアントスイングされてんですか! ていうかなんでぼく気絶してたんですか!」
至極真っ当な疑問を心から叫ぶ。
「意識を刈ったのはお初だけど。ブン回してた理由は、効果的だから」
「なにに!?」
「垂氷に」
云われてから、そういえば視界に逆さまの垂氷が写っていることに気付く。
ロシュも鈍いほうではない。多少の混乱はあっても、置かれている状況を把握するぐらいの能力はある。
つまるところ、なぜか気絶していた自分が、垂氷を困らせる“武器”としてむやみやたらに活用させられているに違いなかった。
「これはヒドイ…」
「百も承知さ、舌噛むぞ!」
ロシュの脳裏に嫌な予感がひた走り、それを肯定するかのようにアイゼンが腰を入れ、腕に力を込めていく。
「いやあああああああ!」
幾度目かの白黒大車輪が垂氷目掛けて進撃を開始した。


「止めないのですか。実質二対一ですよ、あれでは」
幾度目かの嘆息をついた後、頭上の主へと意見する。
「ロシュが進んで協力してるわけじゃない。いつもの無茶苦茶の範疇だろ、使われてるほうに意思があるだけで。そもそもこんな展開になることぐらい、初雪なら分かってたろうに」
ガリガリと頭を掻きながら渋い顔をするオーナーの返答に、初雪は僅かに黙考し、戦場へと視線を戻した。
「…私も主を揶揄出来ませんね。些か入れ込みが過ぎました」
落ち着きを取り戻すためか、一際長く息を吐く。
「気持ちは分かるよ。お互い手塩にかけてるんだから。けど、それはアイゼンだって同じだ。愛おしいと思ってるからこそ、あいつは絶対に手を抜かない」
「然もありなん。よくよく考えれば、この運びは望むところ」
発言にいつも以上の平静さを感じ取り、逆にオーナーのほうが訝しがる。
「なんかあるな」
「ええ」
隠す素振りすら見せずに云い放つ。
「存外に早く見られますよ」


アイゼンを止めること自体は簡単だ。
速度は鈍重、パターンは単調、おまけに隙だらけ。ただただ回転を繰り返しているだけなのだから。
だが、無理に止めた結果、ロシュに被害が及ぶかもしれない。
温和で優しい、普段なら長所であるはずの垂氷の性格が、ここにきて足を引っ張っていた。
ただの武器なら撃ち落とすこともできる。垂氷の腕を持ってすれば難しいことではない。しかしそれも、その“武器”がロシュでなければの話。
止められず、打ち合えず、ひたすらに避け続けながら、必死に打開策を講じる。
出てくるのは焦りばかりだ。いつもなら幾通りも浮かぶはずなのに。予測を越えられることが、予測のつかないことが、これほどまでに怖かったなんて。
座学や訓練では直面しえない事態が、徐々に恐怖となって思考を蝕んでいく。
その機微を見逃すアイゼンではない。
動作も判断も柔軟な垂氷に対し、畳みかけるなら今。
卑怯だろう。非情だろう。それはいつか必ず垂氷に降りかかる現実。
ならばそれを誰よりも先に体現することこそ、アイゼンが用意してやれる唯一の試金石。
抱えたロシュを思い切り、垂氷へと放り投げる。
明らかなフェイントだ。如何にすくんでいようとも、それぐらいは垂氷にも理解できた。
紙一重で飛来するロシュをかわし、アイゼンを探す。
不意に陰る視界。天井照明を何かが遮っている…上から飛びかかってきている!
急いで右手を引き絞り、迎え撃つべく体勢を整えながら、垂氷は空を見上げた。
遥か天井近くに見える、神姫にしては小さすぎるモノ。
…ロシュが頭部につけている、シニヨンキャップ。
なんて、早とちり。
探していた相手は、獣のように低い姿勢で垂氷の懐に潜り込み、そして――
重すぎる衝撃が、垂氷を貫いた。


ノイズが走る。風景がぐにゃりと歪む。身体がくずおれる。
夢でも見ているかのようにぼんやりと、自分の下腹にめり込む拳を見やる。
この右手から逃れないといけなかったはずだ。3秒という時間はさほど長くない。
けれど。
腕も、脚も、頭も…唇や目蓋や指の一本さえ、云うことを聞いてはくれなかった。

――1秒。
負けてしまう。
終わってしまう。
見てもらえたでしょうか。
感じてもらえたでしょうか。
皆さんが下さったご恩が無駄にはならなかったと。
たくさん成長したのだと。
わたしは伝えることができたでしょうか。

――2秒。
本当は、もっともっとお見せしたかったのです。
もっともっと、うまく立ち回れたはずなのです。
でも、体が動いてくれないのです。
頭に靄がかかって、うまく働かないのです。
なにも、できないの、です…


――本当に?
――本当にもう何も残されていない?
――ボクはそんなこと教えてない。
――ボクは“諦める”なんてこと、一度だって教えたことはないよ。


りり……ん。


――体が動かなくたって。
――頭が働かなくたって。
――まだ終わってないのなら。
――諦める暇があるのなら。


りり……ん。


――足掻け!
――もがけ!
――衝動のままに!


りり……りり……


――“己を解き放て[ロックンロール]”!!


りり……りりり……りりりり……


どこかから、鈴虫の鳴き声のような音が響く。
そよ風にすら掻き消されてしまいそうなほど、小さくか細い、その音は。
しかしはっきりと、アイゼンの耳に届いた。
それがなんであるかを知覚するよりも早く――


アイゼンの身体が、宙を舞った。


コメント

  1. 東雲 | URL | Sm/ug.UM

    何という滅茶苦茶さ(褒め言葉

    とりあえずロシュさんの行方が気になるに一票。

    アイゼンさんの戦闘スタイルには、同じ防御系統の神姫である天華とはある一点が違いますな。
    アイゼンさんは頑強さで強引にいき、チャンスを掴む。
    天華は防御力で慎重にいき、チャンスを待つ。
    とりあえず、戦ったら相性は最悪ですがね(ぁ

    何にせよ、アイゼンさんがあまりに愉快な戦闘スタイルなので……。
    ルビー「実に荒唐無稽、筆舌に尽くしがたいが……何よりも面白い……っ!」
    このように実際バトルジャンキー気味なルビーさんが過剰反応をしt(ry

    さて、この流れは垂氷さんのリミブレと見るのが正しいでしょうが……。
    さてさて、どうなるのか拝見させていただきましょう!

  2. 吹雪 香 | URL | -

    Re: 垂氷がんばる。その3。

    行方が気になるに二票目追加!

    ちょっともう右手が限界なので、もう、ゴールしても、良いよね…?
    でも、しょうがないでしょ!こんなに熱くさせる烏丸さんが悪いんだからね!
    最後の部分とか鳥肌が止まりませんでしたよ!?

    しかし、どちらが勝つか分からなくなってきましたね~
    何気にアイゼンさんの経緯も垣間見ることが出来たり、楽しませてもらいましたw

    次も待ってます!!

    …そう言えばルビってどうやってふったんですか?


    >プラモの話
    MGと言うのは「MGと言うクオリティー」を有するキット、という解釈が正しいと思います。
    また1/100だけと言うわけではありませんし。
    (そもそもMGと言うのはガンプラだけのラインナップにあらず、1/35パトレイバーやダンバインなども展開していましたし)
    SEEDシリーズからMGではない1/100キットも出てますが、これらは1/100ですがMGより簡素で作りやすいキットと言う事でしょう。

  3. 祭 | URL | -

    Re: 垂氷がんばる。その3。

    はたして最後に立っているのは…どっち!?(三宅裕司風に)
    次回あたり決着ですかね~。ムムゥ。

    >MG 究極のガンプラを目指すという事でマスターグレードと名づけられたシリーズですよね。
    その辺ややこしいのですが、エクシアあたりは両方で出ていたりするので、普通ガンプラの上位と思っても良いのかも?
    (もっとも、絶対に上とも限りませんが…)
    最近だとガンプラにかぎらず、MG孫悟空もデテマシタヨネ…。

  4. 烏丸 賽 | URL | A1dPOS.E

    Re: 垂氷がんばる。その3。

    東雲さん>
    そうですな、もしアイゼンと天華さんが相見えることにでもなりましたら…
    たぶんふたりでお茶でも飲み始めるかもしれません(おい
    ルビーさんが褒めて下さっているのを受けて珍しくアイゼンがデレモードです、ありがとうございますw
    ここからがこのSSの肝なので、自分も気を引き締めて演出したいと思います!

    吹雪さん>
    なんでこんなにロシュは人気なのか!w
    頂き物にいつまでも慣れない自分ですので、できるだけ我慢して下さい!(汗
    ありがたいですけど!(;´Д`)
    ルビは<RUBY>というHTMLタグがあるんです。ググってみるとすぐ出ますよ~。
    おお、MGはやはりクオリティを差しているのですか。ありがとうございます~。

    祭さん>
    ですね、次回で締めとしたいところです…予定通りいけばですが(汗
    究極で思い出しましたが、パーフェクトグレードなるものもありましたなぁ…。
    MGは高いクオリティなプラモってことで認識しておきますですw
    そういえば悟空もMGでしたねw まさか悟空がプラモで出る日がくるとは思いもしませんでしたががが!

  5. ネフト | URL | 2PRdxZIg

    Re: 垂氷がんばる。その3。

    なんという人間凶器もとい神姫凶器!
    そうか・・・ロシュさんはアイゼンさんの専用武器だったんですねぇ(違
    そしてぶん投げられたロシュさんの安否がw

    解き放たれた垂氷ちゃんの力・・・・楽しみにしておりますw

  6. 烏丸 賽 | URL | A1dPOS.E

    Re: 垂氷がんばる。その3。

    ネフトさん>
    開戦前にうろちょろしているから…!
    どんなモノであろうと使えるならばそれはアイゼンの武器となり防具となりますw
    ロシュの安否はその4で語られる…かどうかわかりません(おい
    ていうかロシュ人気すぎる…!w

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